IASのCEO リサ・アッツシュナイダーに聞く

Marketing in AsiaのZu Anjalika Kamis Gunnulfsenによるインタビュー(転載)

2020年06月04日 By IAS Marketing
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Marketing in Asia (MIA):最初に経歴を拝見したとき、圧倒されました。Adweek 50やBusiness Insider の「Most Powerful Women in Mobile Advertising(モバイル広告業界でもっともパワフルな女性)」、New York Business Journal の「Women of Influence(影響力のある女性)」など、多くのタイトルや賞を受賞されていますね。中でも目を引いたのは Working Mother の「50 Most Powerful Mums (最もパワフルなママ50人)」です。このような称賛を受けている人にお会いすることはそうそうありません。最もパワフルなママ50人の一人になるには、何が必要なのでしょうか?

 

Lisa:数年前にこのような高い評価をいただいたことを、とても光栄に思っています。外部からの評価の有無にかかわらず、私自身はママであることをとても大切にしています。ママ(とパパ)はそもそもパワフルです。働いているママやパパに、キャリアや家庭生活をどのように管理しているのかを尋ねたら、信じられないほどのストレスと驚くべき工夫の話が聞けるはずです。特に今日のようなグローバルなパンデミックの環境下ではなおさらです。

この点で、私は他の働く親と何ら変わりはないと考えています。そして、配偶者、家族、親しい友人、上司、同僚、さらにはベビーシッター、先生、コーチ、子供の友人とその家族、近所の人たちといった家族ぐるみの社会的ネットワークという、素晴らしい環境に恵まれているとも感じています。

MIA:あなたは、不正行為、ビューアビリティ、ブランドリスクといった課題に取り組み、デジタル広告の配信面の価値を分析するテクノロジー企業 Integral Ad Science (IAS) の舵取りをされています。IAS についてお聞かせください。

Lisa:IASは2009年に設立された、デジタル広告検証(アドベリフィケーション)のグローバルマーケットリーダーです。私たちのビジョンは、デジタルメディアにおける信頼性、透明性、予測化学のグローバルスタンダードとなることです。もっと簡単に言うと、デジタル広告の品質を検証しています。IASはすべての広告チャンネルで、3つの方法でこれを実行しています。

  • ビューアビリティ:広告が視認可能な状態で画面に表示されることを保証し、見る人に対してインパクトを与えられるようにします。
  • アドフラウド検知:IASのテクノロジーは、広告がボットのような偽のトラフィックではなく、実際の消費者に配信されているかを検証します
  • ブランドセーフティと適合性:ブランドにとって安全でないコンテンツに隣接して広告が表示されないように、そしてよりブランドに適したコンテンツで広告がひょじされるようにすることで、クライアントのブランド価値を守ります。

広告主は、デジタルキャンペーンにおけるアドフラウドやビューアビリティ、ブランドリスクを考慮することなしに、正しいROIを把握することはできません。IASは広告主やパブリッシャー向けに、広告投資を不正や安全でない環境から守るためのインサイトとテクノロジーを提供すると同時に、消費者のアテンションを獲得し、ビジネスの成果を上げるためのサポートを実施しています。IASは最高の技術的頭脳、AIと機械学習を駆使した最先端の技術を保有しており、複雑に進化し続けるデジタル広告のエコシステムに根本的な透明性をもたらすことを可能にしています。

MIA:3年後、5年後に、デジタル広告業界はどうなっていると思いますか?

Lisa:デジタル広告は非常にダイナミックな業界なので、将来について確信を持つのは難しいですね。でもこの業界で大きな変化と変革の時代を経験してきましたので、いくつか推測をすることはできます。例えば

  • 透明性があり、説明責任があり、そして計測可能であること:広告の押しつけがましさは減り、関連性は高まり、そしてより計測可能となるでしょう。多くの広告主が、ビューやインプレッション、クリックのような些末な指標にフォーカスしてきました。これからは、リアルタイムな成果や、施策がマーケティングファネルのどの段階に貢献しているのかに注目するようになると思います。ブランドの差別化は、自己満足的な指標を追いかけることから、消費者とエモーショナルなつながりを構築することへとシフトしていくでしょう。私たちは世界的にメディア品質を高めることに積極的に取り組んでいます。今後数年でデジタルメディアの透明性は高まり、結果に対する説明責任を負うようになると予測しています。
  • クッキーの終焉と、文脈ターゲティング:データプライバシーに関する法規制の強化に加え、Chromeが2022年までにクッキーを廃止すると発表したことで、パブリッシャー、広告主、テクノロジープロバイダーの間で対策を模索する動きが出てきています。この変化がデジタルメディア取引に永続的な影響を与えることは間違いありません。パブリッシャーがこうした変化を先取りすることができれば、コンテンツとファーストパーティ―データの主導権を取り戻すことができるでしょう。
  • コンテキスト(文脈)に基づいた広告は、豊富なファーストパーティデータを保有するパブリッシャーにとって、リーチを拡大し、オーディエンスの声を代弁することにつながります。ブランド適合性を重視する広告主の期待に応えるためには、ブランド毀損リスクの高いコンテンツから保護する以上のテクノロジーが求められます。そのためにはウェブページのコンテンツを、これまで以上に詳細な粒度と規模で明確に理解できる技術が必要です。
  • CTV/OTT:CTT(コネクテッドTV)とOTT(オーバーザトップ、動画配信や音声通話などのコンテンツ提供サービス)は今後も成長を続け、特にCTVは若年層の視聴者に大規模にリーチする重要なチャンネルとなるでしょう。すでにD2CブランドがCTV広告に多額の投資を行っているのを目の当たりにしています。またCTVはプログラマティック取引に対応するチャンネルが増えてきており、ブランドセーフティが損なわれたり、アドフラウドが発生するリスクをもたらしています。IASは、広告主やパブリッシャーがこの新しい環境で自信をもって広告を掲載できるように、CTV向けのソリューションの拡大を続けていきます。また、広告が表示されない有料のストリーミングサービスが増えるに従い、複数のサービスに登録する金銭的負担から、こうした有料サービスへの登録が鈍ることも予想されます。
  • ソーシャル:今日では、ブランドも消費者もセルフィートライクとツイートとストーリーを生きています。消費者にリーチするためにソーシャルキャンペーンの影響を計測し把握することは、これまで以上に重要です。ソーシャルメディアプラットフォーム(Facebook、Instagram、LinkedIn、Twitter、Snapchat、TikTok、YouTubeなど)への広告費は今後も増加し続けられると予測され、広告主は自身の広告がボットではなく人に、閲覧可能な状態で表示されているかどうかについて確信を持つ必要があります。幅広いソーシャルメディアプラットフォームと連携しているIASのようなアドベリフィケーションベンダーを活用し、透明性と安全性を高めていく必要があるでしょう。IASは、ブランドがプラットフォームで一貫したエクスペリエンスを提供し、購入メディアの品質を確実に把握できるように支援することに尽力しています。

MIA:IASの前には、Yahoo、Amazon、Microsoftなど、業界のビッグネームにお勤めでした。現在のポジションにたどり着くまでのキャリアパスについて教えてください。

Lisa:私は2019年1月にCEOとしてIntegral Ad Sciene (IAS)に入社しました。それ以前はYahoo!で最高収益責任者(CRO、Chief Revenue Officer)を務めていました。キャリアを通じて、デジタル広告ビジネスで20年間、大手テクノロジー企業での経験があります。最初はMicrosoft、次にAmazon、Yahooですね。常にニューヨーク市(NYC)を拠点にしており、現在はコネチカット津から通勤していますが、自分自身は生涯ニューヨーカーであると思っています。

私は幸運にもMicrosoftでキャリアをスタートさせ、そこでデジタル広告ビジネスについて多くのことを学びました。Microsoftは組織の中でもっとも下っ端として入社しましたが、10年後にはゼネラルマネージャー/パートナーとして退社したことを誇りに思っています。Microsoftの後はAmazonに入社し、ニューヨークで8人のチームからスタートしたグローバル広告ビジネスをゼロから構築しました。Amazonでの経験は、データと実験の重要性を私に教えてくれました。

Amazonのあと、Yahooに入社し、Verizonに買収される前の非常に重要な時期にグローバルな営業組織を統括していました。YahooのCROとして定期的にYahooの役員と交流する機会があり、その経験が企業の財務管理についての理解を深めるのに役立ちました。

私がIASに入社した大きな理由は、IASが広告主にとってデジタル広告をより安全なものにすることに情熱を持った非常に知的な人々で構成されていることです。マーケテイング担当者は2018年に世界で2730億ドルをデジタル広告に費やしており、ボットや詐欺の時代には、ブランドの誠実な姿勢が正しく伝わることが必要とされています。IASは、この必要とされる信頼と透明性を提供します。これは非常に関連性が高く、複雑な分野でもあるため、私にとっても非常にやりがいがあります。

MIA:あなたはこれまで「ガラスの天井」を破ってきました。今の地位に至るまでの最大の後押しやモチベーションは何ですか?

Lisa:私は幸運にも、これまでのキャリアを通じて、素晴らしいリーダーたちから指導を受けてきました。その中で、3つの有益なアドバイスが頭に浮かびます。最初のアドバイスは、キャリアの早い時期に女性幹部から受けたもので、自分の個人的な優先順位と仕事上の優先順位を明確にすることでした。交渉可能なものと交渉不可能なものとは何か?あなたが優先する「神聖な時間」とは何か?例えば、私は可能な限り、夜に帰宅して娘たちをベッドに寝かしつけ、就寝前に読み聞かせをする努力をしてきました。これは私の「神聖な時間」であり、譲れないことです。

アドバイスの2番目の部分は、私のメンターの一人からのもので、個人的なことや専門的なことのうち、私が恐れを感じることを毎日ひとつ行うように、というものでした。このアドバイスは、私は大胆に自分が快適と感じるゾーンの外に出るのを後押ししてくれています。また、誰も望んでいない仕事に手を挙げ、自分の役割に決して満足しないようにと励ましてくれました。私は、普通のキャリアパスに沿っていないチャンスでも受け入れることを学び、そのおかげで貴重なスキルを身につけることができました。

MIA:新型コロナウイルスの影響を受け、多くの企業がバーチャルな事業展開を余儀なくされています。ポストコロナになっても、この流れは続くと考えますか?

Lisa:従業員を力づけ、彼らの幸福を優先させ、自分の役割で成功するために必要なツールを提供することが、これまで以上に重要になっています。このような混乱の時代にあって多くの企業が学んだことは、機動性を保ち、つながりを持ち、装備を整えておくことが、現状を打開し、生産性を維持するための最良の方法であるということです。リモートワークは世界中の企業にとって現実のものとなっています。将来を予測することはできませんが、この状況を通して学んだ教訓と課題は、人々がリーダーシップ、コラボレーション、そして変化をナビゲートするための機敏なアプローチを持つことについてどのように考えるかに、プラスの影響を与えることを期待しています。  

MIA:世界的なパンデミックは、デジタル広告にどのような影響を与えているでしょう?

Lisa:私たちのお客様からは、広告業界が「ニューノーマル」に適応していく中で、前例のない課題にどのように最善の方法で対応するかについての指針を求る声が多く聞かれます。ブランドセーフティと適合性、そして広告視聴者へのリーチと在庫の収益化は、私たちのクライアントにとっての最優先課題です。

IASは、マーケティング担当者やパブリッシャーが「ニューノーマル」な世界で迷うことなく進むために必要な正確なデータとツールを手に入れられるように努力することで、自信の役割を果たしてきました。啓蒙コンテンツの提供や、プログラマティック広告におけるビューアビリティが世界的に改善していることを示した『メディアクオリティレポート』の発表もその一例です。さらに最近では独自のボット技術を開発し、競合他社との機械学習アレゴリズムの負荷テストを行い、マーケティング担当者はボットによる詐欺のリスクにさらされる可能性が高いことが分かりました。私たちのパートナーは、業界の関連情報や知見の提供元としてIASを信頼してくださっています。今後も状況の変化に応じて、調査やさらなるインサイトを提供していきます。

MIA:世界が常に変化し、人々が進化していく中で、現在の、そして将来にわたって働く人々をリードし、インスピレーションを与える最も効果的な方法とは何でしょう?

Lisa:多様なグローバルチームのリーダーとして大切にしているのは共感、透明性、そして説明責任です。IASの社員はSlackに開設した#ask-lisaというチャンネルでも、週に一度開催している全社集会でも、いつでも私に連絡を取ることができます。チームとの複数のタッチポイントを持つことで、私は説明責任を果たし、組織の動向を把握することができます。IASでは We Are One Team という企業価値を掲げています。これはバーチャルであろうとオフィスであろうと、どこにいようと、私たちは一緒に仕事をしhているということを意味しています。私たちはともにこの状況にあり、そしてこの経験からさらに強い組織となることができるでしょう。

 


この記事は2020年5 月14日に Marketing in Asia に掲載されたインタビュー記事をもとに、IAS Insider Japan編集チームが翻訳しました。