「ネット広告健全化プロジェクト」発足で加速するアドベリフィケーション活用

ネット広告健全化に向けた歩み

2020年06月23日 By Taro Fujinaka

2020年6月23日、IASは日本アドバタイザーズ協会(JAA)Web広告研究会、および国内でアドベリフィケーション事業を展開する主要4社とともに、「ネット広告健全化プロジェクト」を発足しましたプレスリリース)。プロジェクトではネット広告取引の透明化を図り、不正を防止していくとともに、これらに不可欠なアドベリフィケーションの啓発活動を積極的に行っていきます。

この取り組みはNHKのニュースでも取り上げられ、IASにもたくさんの反響や賛同の声をいただいています。そこで今回は、プロジェクト発足の背景となったデジタル広告業界が抱える課題と、IASがこれまでに課題解決のために業界団体やキープレイヤーたちと行ってきた主な取り組みをご紹介します。

プロジェクト発足の背景 ~消費者に信頼されるデジタル広告へ

2019年、日本のインターネット広告費は6年連続で2桁成長を遂げ、前年比119.7%の2兆1048億円で、テレビメディアの1兆8612億円を上回り、市場が拡大しています。一方、市場拡大と共に「アドフラウド」と呼ばれるネット広告配信における広告インプレッションの水増し、不正インプレッションなどによる詐欺的な不正行為が国際的に大きな問題になっています。広告詐欺ともいわれる「アドフラウド」は、対策をしない場合10%を超える割合で存在するとされ、その被害額も決して小さいとは言えません(※1)。

また、ネット広告の市場拡大や影響力の高まりにより、「アドフラウド」以外にも、企業のブランド毀損を防ぐブランドセーフティや、掲載された広告が実際にインターネットユーザーに見られる環境・状態にあるかを評価するビューアビリティといった新たな観点から、企業のデジタル広告運用において評価や検証が必要となっています。

これらの問題に対応する解決策が、「アドフラウド」、「ブランドセーフティ」、「ビューアビリティ」に配慮した、不適切な広告配信を防ぐための広告価値毀損測定の仕組みを指す「アドベリフィケーション」です。政府のデジタル市場競争本部事務局がとりまとめた中間報告では、アドベリフィケーションに必要な「情報の開示が不十分であり、検証することができない」、「広告掲載面や掲載媒体の透明性を高める必要がある」「ビューアビリティのレベルについて、第三者による検証・測定がなされるべき」といった声が多く上がっている現状が指摘されており(※2)、課題解決へのさらなる取り組みが必要だと言えます。

さらに、この度「デジタルプラットフォーム取引透明化法」が成立し、通販サイトとアプリストアを対象に取引内容の開示と定期報告の義務付けが決まりました。今後は「デジタル広告」の分野でも、透明化法での規制も含めて対応を検討する方針であり、デジタル広告取引の透明性を高めるルールづくりが動き出しました。

広告主をはじめとした業界関係者が一眼となって広告の透明性の向上と健全化の取り組みを推進していくことは、ネット広告に対する生活者の不信感を払しょくし、業界全体が健全に発達していくために不可欠です。IASはこれまでも、JAAやアドベリフィケーション企業各社と連携して啓発活動に努めてきました。本プロジェクトは、これまでの取り組みを強化するもので、日本市場におけるアドベリフィケーションの普及を促進させることができると期待しています。

デジタル広告健全化、IASと業界のこれまでのあゆみ

IASは、広告主、代理店、アドテク企業、パブリッシャーといったデジタル広告業界関係者とのパートナーシップにより、グローバルにアドベリフィケーションサービスを提供し、世界トップ広告主100社のうち90社以上にサービスをご利用いただいています。業界初のパブリッシャー/DSP向けサービスの提供や、コネクテッドTVにいち早く対応するなど、アドベリフィケーションの発展と普及に力を注いできました。

IASは2009年にアメリカで産声を上げました。当時はまだ「アドベリフィケーション」という言葉も一般化していませんでしたが、創業者たちは「デジタル広告の透明性を向上し、広告費の無駄を排除する」という強い想いでこの課題を解決するためのソリューションを開発・提供してきました。その後、アドフラウドやブランドセーフティの問題が欧米を中心に注目を集めるなか、2015年に日本オフィスを開設。日本のデジタル広告業界で豊富な経験を持つ立ち上げメンバーを中心に、業界団体やキープレイヤーたちとともに課題解決に取り組んできました。

下に、2009年のIAS創業から2020年までの、IASとアドベリフィケーションの主なトピックスをまとめました。

 

  • 2009年5月 Integral Ad Science設立(当時はAdSafe Mediaという社名でした)
  • 2010年6月 IAS初の『メディアクオリティレポート』発表
    メディアクオリティレポートは、IASがグローバルで年2回実施してる「ブランドリスク」「アドフラウド」「ビューアビリティ」をはじめとするアドベリフィケーション指標に関する調査結果をまとめたベンチマーク・レポートで、毎年春と秋の2回発行しています。
  • 2012年7月 IAS初のアドフラウド対策ソリューションをリリース
  • 2013年11月 IASがビューアビリティソリューションでMRCの認証を取得
  • 2015年7月 IAS日本オフィス開設
    日本でのサービスを開始するにあたってIASが大切にしたのが、欧米で提供するソリューションをそのまま提供するのではなく、日本のデジタル広告環境にあわせたローカライゼーションを行うことです。文化的な違いが大きいブランドセーフティでは、日本のインターネット企業を牽引するトップ企業と協力し、カテゴリーの分類を全面的に見直しました。
  • 2017年1月 IAB年次総会で、P&GのCBO(最高ブランディング責任者)マーク・プリチャード氏が「P&Gは、『透明性』の担保されたメディアとしか取引しない」という強いメッセージを発信広告の透明性に強い疑問を投げかける発言が欧米のマーケティング業界で話題となり、アドベリフィケーションへの取り組みを大きく前進させました。
  • 2017年10月 電通、IAS、Momentum、電通デジタル、サイバー・コミュニケーションズによる「アドベリフィケーション推進協議会」発足
  • 2017年10月 IAS『メディアクオリティレポート2017年上半期版』を発表
    2017年上半期版から日本市場も対象となり、アドベリフィケーションに取り組む際のベンチマークとして幅広く活用いただいています。
  • 2017年12月 東洋経済で特集「ネット広告の闇
  • 2018年4月 NHKクローズアップ現代+で「ネット広告の闇」シリーズ放送開始
    初回放送の「追跡! 脅威の“海賊版”漫画サイト」、第2回放送「追跡!ネット広告の“闇”」は、広告業界だけでなく一般消費者にも衝撃を持って受け止められました。
    前年の東洋経済の特集とともに、「アドフラウド」や「ブランドセーフティ」といったアドベリフィケーションの諸問題の認知が一気に高まりました。
  • 2018年4月 IASが開発し、IABに移管したモバイル広告計測SDK(Open Measurement SDK)の無償提供開始
  • 2018年9月 JAA「WFA Global Media Charter 日本語版発行
  • 2019年4月 宣伝会議とJAAが共同で「デジタル広告における意識・実態調査」を実施
    「アドベリフィケーション」の認識について「言葉自体を知らない」と回答した人が42%にのぼり、日本の広告会では問題自体がまだ浸透していない状況が浮き彫りになりました。
  • 2019年11月 JAA「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言」発表
    発表翌日のアドテック東京では特別セッション「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言 ~知っておくべき「健全な業界発展に向けた8大原則」~」も行われ、監査・認証組織「JICDAQ」の近年中の設立が発表されました。
  • 2020年2月 JAA日本アドバタイザーズ協会、JAAA日本広告業協会、JIAA日本インタラクティブ広告協会「デジタル広告の課題解決に向けた共同宣言」発表
  • 2020年6月 JAA、IASと主要アドベリフィケーション事業者4社による「ネット広告健全化プロジェクト」発足

 

IASは、アドベリフィケーションの発展と普及をリードしてきた企業として、これからもWeb広告研究会及びプロジェクト参画企業の皆様とともにアドベリフィケーションの普及に努めてまいります。

 


※1「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言」(2019年11月、日本アドバタイザーズ協会発表)
http://www.jaa.or.jp/wp-content/uploads/2019/11/JAA_proclamation.pdf
※2「デジタル広告市場の競争評価中間報告」(2020年6月、デジタル市場競争会議)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/kyosokaigi/dai4/siryou2s.pdf