Web広告を見たときに脳が辿る3つの”認知の近道”

「ホットポテト」、「ゲシュタルト」、そして「ハロー」効果

2019年10月07日 By IAS Japan Team

人間の脳は様々な素晴らしい能力を持っています。人体で最も複雑な臓器であり、膨大な処理能力を持っている脳が、リソースを節約するために時々”近道”をすることがあるとしても、驚くことではありません。心理学では、この近道は認知スキーマとして知られており、脳ができるだけ早く情報を処理・解析するのをサポートするフレームワークです。

脳の”近道”を活用してポジティブな効果を得られる例はたくさんあります。例えばスキーマは、子供が言語を学び、基本的な社会的スキルを発達させるのに役立っています。反面、ネガティブな影響も同じくらいあることを忘れてはいけません。すでに知っている知識をもとに、必要ないと判断した情報を切り捨てたり、知らず知らずに偏見や間違った考えを持ってしまうことにもつながるのです。

近年、広告がもたらす影響を心理学や脳科学的アプローチで分析する試みがマーケティング担当者の関心を集めています。私たちIASが発表した『脳科学から見るブランド認知~広告閲覧環境におけるハロー効果とブランド好感度への影響に関する調査レポート』は、「ハロー効果」と呼ばれる動きに着目し、デジタル広告が表示されるコンテンツ環境が広告やブランドに与える影響について脳神経学的な手法で調査した結果をまとめたものです。同様に、『 Nielsen Norman Group studies on Banner Blindness』は認知スキーマが、広告主のターゲットオーディエンスへのリーチを阻害する可能性があることを明らかにしました。

認知スキーマがどのように消費者の広告認知に影響を与えるのか、3つの例を詳しく見てみましょう。

 

1.有効性バイアス 「ホットポテト」効果

Nielsenの研究では、人間の視線の動きを追跡・分析するアイトラッキング調査を実施し、ウェブページを閲覧しているときの関心度を視線の動きのパターンから分析する試みが行われました。この調査で明らかになったのは、多くのインターネットユーザーが有効性バイアスに基づいてページを閲覧しているという事実です。過去に見たページでどこに広告が配置されていたかに基づいて、広告が表示される場所を予測しながらコンテンツを閲覧していることが分かったのです。それだけでなく、広告が表示されそうな”ホットエリア”を無意識的に”見落とす”ことも分かりました。調査を実施したNeilsenの言葉を引用すると、つまりこういうことです。

「ユーザはウェブ上で興味のない内容を注視した後、ページのその場所や、場合によってはウェブサイトのほかのページ、さらには全く別のサイト上でも、広告があった場所を無視するようになるという厄介な現象が確認されたのです。私たちはこれを”ホットポテト・スキャン・パターン”と名付けました。(訳注:”ホットポテト”は英語で”厄介な問題”を意味する慣用句)」

つまり、もしもあなたの広告が”ホットエリア” ー例えば下の図で青緑色で示されているサイドバーのあたりーに表示されるとしたら、素晴らしい第一印象を与えられなければ、見過ごされるリスクがある、ということです。

 

2.ゲシュタルトの近接の法則

広告が配置さる場所だけでなく、広告を囲む周囲も潜在的な影響力を持ちます。ゲシュタルト心理学では、私たちが一連の対象を見る際に行っている無意識な関連付けと視覚的な認知について、6つの法則を用いて説明します。類同(Similarity)、連続(Continuation)、対称性(Symmetry)、図と地(Figure and ground)、そして近接性(Proximity)です。

近接性と類同の法則は、お互いに近接していて形やサイズ、テクスチャ、色などが共通している対象物同士は一つのグループとして認知されるというもので、広告の配置問題に最もよく関連付けられる法則です。このスキーマは、広告が芳しくないコンテンツと隣り合わせで表示された時に見落とされがちな理由の一つかもしれません。ユーザが特定のタイプのコンテンツを見たとき心理モデルが形成され、隣接して表示されていた広告もその心理モデルに”汚染される”のです。つまり言えるのは、コンテキストが重要、ということです。

 

3.ハロー効果

「ハロー効果(Halo Effect)」はすでに十分研究された認知バイアスで、ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のことを指します。多くの場合、人物の認知と関連付けて説明されるこの”脳の近道”は、身体的な魅力がその人物の性格まで良いように錯覚させること、あるいは古い格言「美しいものは良いものに違いない」のもととなっていると言われています。
(訳注:ハロー効果は、人の頭上に描かれる光輪(英語でHaloハロー)にちなんでいます。権威のある人物が専門外のことでも権威があると感じられてしまったり、外見の良い人が信頼できると感じられてしまうことを指します。)

IASのリサーチチームがNeuro-Insight社に依頼して実施した「脳科学から見るブランド認知~広告閲覧環境におけるハロー効果とブランド好感度への影響に関する調査レポート」(原題はThe Halo Effect)は、広告認知に関する3つの重要な要素、好感度、エンゲージメントと記憶への残りやすさを脳の活動にマッピングしました。

この調査では、高品質なサイトに表示された広告は、低品質なサイトに表示された場合と比較して74%好感度が高いことがわかりました。それだけでなく、低品質のコンテンツ環境で否定的に知覚された広告は、より強い感情的強さを伴っており、これらの広告に対する「積極的な」嫌悪や刺激を示しています。

主なポイント

認知スキーマに関する研究は、広告が表示されるコンテンツ環境が消費者の知覚に影響を与えるという事実に関して、議論の余地のない証拠を提示しています。このことをどう受け止めればよいのでしょうか?

マーケティング担当や広告主にとって、戦略立案における科学的アプローチの重要性はこれまでになく増しています。次のキャンペーンを企画する際には、次の2つのポイントを考慮してみると良いかもしれません。

素晴らしい印象を与えよ:
魅力的で創造的なデザインとコピーを駆使して、ホットポテト効果を最小限に抑え、有効性バイアスによって消費者があなたの広告をスルーしてしまう前に注意を引きましょう。

ブランドセーフティの先を行け:
近接と類同の法則は、消費者のブランドパーセプションに影響を与えます。広告が表示されるコンテンツ環境の品質が重要なのです。「脳科学から見るブランド認知」調査レポートを、あなたのガイド役として活用してください。ブランド価値を棄損するリスクを避けるブランドセーフティだけでなく、ブランドの品位や文脈との適合性を重要視してください。消費者にポジティブな印象を与え、記憶に残りやすい体験を提供するのです。レポートはこちらから無料でダウンロードできます。

ターゲットとする消費者の認知パターンを理解することは、脳の近道を予測し、消費者に常にブランド価値に適合したコンテンツで広告を表示できるようにするのに役立つでしょう。

 


※この記事は英語版Insiderに掲載の「3 ways your brain takes cognitive shortcuts when it views an ad」をもとに、IAS Insider Japan編集チームが翻訳、編集しました。