アドフラウド入門:アドフラウドが発生する仕組みを理解しよう

2019年07月17日 By IAS Japan Team

アドフラウドは、デジタル広告で発生する広告詐欺や不正広告のことで、広告費を不正に搾取される仕組みを指します。

2018年の日本の総広告費は6兆5,300億円。インターネット広告費はそのうち1兆7589億円で、5年連続の二けた成長を記録し、地上波テレビ広告費にいよいよ迫ろうとしています。膨大な広告費を集めるデジタル広告には、テレビや雑誌など従来のメディアでは起こりえなかった、デジタルならではの課題が発生しています。アドフラウドもその一つです。

ブランドや商品の認知向上や理解促進、新規会員の獲得や商品購入などの目的でデジタルに広告費を投じたとしても、インプレッションやクリックを不正に発生させる詐欺業者に引っかかってしまうと、広告は消費者に届かず、広告主は貴重な広告費を無駄にすることになります。

私たちIASはアドフラウドを検出し、不正なインプレッションやクリックが発生する前にブロックするソリューションを提供しています。本稿では、アドフラウドはなぜ発生するのか、アドフラウドにはどのようなものがあるのかを解説していきます。

あなたも知らないうちに加担しているかもしれない?!

まず最初に、アドフラウドの関係者を整理しておきましょう。


アドフラウドには主に3つのプレイヤーが存在します。

  1. ハッカーや不正業者といった、アドフラウドを働くことによって不当に金銭を得る個人や集団
  2. ハッカーや不正業者によって作られたボットおよびボットネット
  3. ボットに感染した一般消費者

それぞれのプレイヤーのイメージをもう少し具体化してみましょう。
ハッカーや不正業者、そしてボットネット事業者は旧ソ連の地域、具体的には東ヨーロッパに多く、不正トラフィックの発生源を解析してみるとこの地域からのアクセスが多いことがわかります。金銭を得ることには貪欲で、法律やルールを守ることにはあまり意義を感じていません。パソコンやテクノロジーの知識が豊富で、自在に使いこなすことができる高いスキルを持っています。
一方ボットに感染する一般消費者は世界中に散らばっています。テクノロジーにあまり明るくなく、古い端末やソフトウェアをアップデートせずに使い続けていると、その脆弱性をつかれて知らないうちにボットをインストールしてしまうケースが多く見られます。

 

アドフラウドの仕組み

プレイヤーによってアドフラウドが発生する大まかな仕組みは次の通りです。

  1. まず、ハッカーや不正業者がボットを作成し、ボットネットセンターから操作できる環境を構築します。(ボットについて詳しくはこちらの記事を参照してください)
  2. フリーアプリのインストールなどに紛れ、一般消費者のデバイスにボットをダウンロードさせ、インストールさせます
  3. ボットネットワーク運営者がボットを操作し、プレミアムサイト(質の良いWebサイト)にアクセスさせ、クッキーを取得させます
  4. フラウドのためのサイトを立ち上げ、トラフィックエクスチェンジなどの手法で大量のアクセスを稼ぎ、信用力を高く見せたり、広告出稿先として魅力的であるかのように見せかけます
  5. 4のサイトに広告が出稿され、継続的にボットに表示されたり、悪意あるアフィリエイトサイトなどからクリックを発生させます
  6. 不正な広告インプレッションやクリックなどの対価として、ハッカーや不正業者に広告費が支払われます

たとえ積極的にボットを作ってばらまいたりしていないとしても、知らないうちにボットに感染して不正業者に加担している可能性もあるわけです。

また、質の良いWebサイトでもフラウドが発見される理由の一つが、そういったサイトでクッキーを取得させ、偽りのユーザープロフィールを構築することです。「40代・男性・車好き」といったターゲティングをしている広告を表示させるために、そういったプロフィールの人物が訪れそうなサイトにアクセスしてクッキーを蓄積するのです。

 

不正業者はどうやって金銭を得るのか

ハッカーや不正業者が金銭を得る手段は様々ですが、代表的なものをいくつかご紹介します。

  • サイトの規模や信頼性を本来よりも高く見せかけたいサイト運営者からの依頼を受け、不正にアクセスを増ややすことで、サイト運営者から報酬を得る
  • ポイント系サイトやアフィリエイトサイトなどでアクセスやクリックを偽装し、不正に金銭を得る
  • 不正な広告を掲載したサイトを自ら立ち上げ、そこにボットをアクセスさせることで不正に広告費を得る

一口にアドフラウドといっても、手法や金銭を得る手段は様々です。アドテクノロジーの進化と競うように不正業者も手口を巧妙化させるため、常にイタチごっこになってしまうというのが実情です。

 

アドフラウドが発生するサイクル

アドフラウド対策には不正を検知・排除する仕組みの導入が有効です。加えて、広告主が広告本来の目的に沿った指標で成果を検証し、安易な指標で「安かろう悪かろう」と妥協しないことも重要です。下の図はアドフラウドが発生し、そしてなくならない負のサイクルを表しています。

特に問題なのが、とにかく大量にインプレッションを獲得し、安価なクリックを稼げればよいというような「質より量」を重視した運用をしているケース。安価な広告枠には低品質で、フラウドが多く発生しているようなメディアの割合が増える可能性が高く、不正インプレッションやクリックが大量に発生します。しかし、インプレッションやクリックの数を稼ぐこと、具体的にはCPCを評価の軸にしてしまうと、実際にはリーチしたい顧客に届いていなかったとしてもそのキャンペーンは「成功」と評価されてしまいます。一度この評価が出来上がってしまうと、次のキャンペーンも質よりも量を重視するメディアプランを組んでしまい、広告の「質」の精査がされないままに「量」を評価するサイクルが確立されてしまいます。

 

「量より質」を重視するKPIを設定することで、負のサイクルを断ち切ることができる

これに対し、「量」よりも「質」を重視してキャンペーンを評価するKPIを設定した場合は、キャンペーンメッセージをターゲットユーザーに届け、質の良いクリックやコンバージョンを生むメディアを中心にメディアプランを組みます。ほとんどのケースで、こういったメディアのフラウド率は低く抑えられています。
認知やコンバージョンといった本質的な結果が向上することで、「量より質」を測るKPIがその後のキャンペーンでも適用されるという、ポジティブなサイクルが回り始めます。

 

アドフラウド対策のためにIASができること

デジタル広告からアドフラウドを完全に排除するのは、残念ながら非常に困難です。貴重な広告予算を無駄にしないために、また不正に広告費を搾取する不正業者を可能な限り排除するために、広告の本質的な目的をしっかり理解し、適切なKPIを設定し、アドフラウド対策ソリューションを導入することが大切なのです。
IASは、デジタル広告に関する不正やそのテクノロジーの調査・対策のため、業界団体や学術機関の専門家と連携した専門のフラウドラボを設立し、日々進化し続けるデジタル広告不正と闘っています。ここでご紹介したようなアドフラウドの手法を徹底的に研究し、機械学習のような最新のテクノロジーを用いたソリューション開発を行っています。

IASのアドフラウド対策について、詳しくはこちらをご覧ください。

デジタル業界の透明性向上という社会的チャレンジに対し、広告主、代理店、パブリッシャー、アドテクベンダーといったプレイヤーの皆さまとともに、適切なソリューションを提供してまいります。