Uberのアドフラウド裁判はアドベリにおけるニワトリタマゴ論争に一石を投じるか

2019年07月09日 By IAS Japan Team

2017年9月に米ウーバーテクノロジーズ(Uber)が、代理店パートナーのフェッチ・メディア(フェッチ)を相手取り、アドフラウドによって過大な広告費を支出されたと損害賠償を請求した訴訟に関する続報が届きました。

海外メディアは AdExchanger などマーケティング系メディアが報じていますが、現時点で日本のメディアではほとんど取り上げられていないため、日本語でアクセスできる情報が極端に限られています。海外での報道も、2017年当初の報道よりは控えめですが、いくつかのメディアが詳細な報道をしています。報道内容を整理してみましょう。

 

Uberがフェッチに対して起こしたアドフラウド訴訟

2017年9月、Uberは広告代理店パートナーのフェッチに対し、大規模な(一説によれば数百万ドル=数億円)の裁判を起こしました。この時の訴状によると、Uberは2015年に締結したフェッチとの広告キャンペーン契約にもとづき約93億円をフェッチに支払いましたが、アプリのダウンロードを目的としたこのキャンペーンでアドフラウドにより広告費が不正に搾取されたとし、Uberはフェッチに対して損害賠償を訴えていました。

 

訴訟対象にアドネットワーク数社と下請け業者100社が追加に

今回公開された法廷文書によると、Uberは代理店パートナーに加え、数社のアドネットワーク企業と、無名の下請け業者100社を追加で訴えています。これらの企業は、Uberのキャンペーンで、フェッチを介して数千万ドルの支払いを受けたとされている、と報道されています。投下された広告費の中にはUberがブラックリストに登録していたサイトに配信されていたものや、クリックスプーフィング、アドスタッキングなどアトリビューションやビューアビリティ不正に関するものが大量に含まれていたということです。

 

アドフラウドを防げなかったのは誰の責任なのか?

アドフラウド自体は許されることではありません。しかし同時にアドフラウドは、デジタル広告のサプライチェーンの不透明さと、匿名の業者や個人が金銭を不正に得ようとする動機とが、不幸な形でマッチしてしまった結果とも言えます。さらに、多くの広告主はキャンペーンの量を求める一方で、大量のインプレッションやクリックがどこから来ているのかまでは精査していないケースがまだ多く見受けられます。

フェッチに対する訴訟を起こした後、フェッチがUberに対して未払い広告費の支払いを求める訴訟を起こすなど、関係性が悪化。Uberはプログラマティック広告の内製化を進めていると伝えられています。目的の一つは、アドフラウドを排除し、安全で健全なサイトに安心して広告を出稿することです。

また、欧米では安全な広告環境を求めて多くの広告主がSNSやプレミアムパブリッシャーに出稿先をシフトしています。とはいえ、大手広告主が不正なアドネットワークや媒体を排除したところで、不正業者は別の、意識が低く対策を行っていない企業へとターゲットを移すだけで、デジタル広告のエコシステム全体の根本的な解決にはなっていません。

こういった状況を打破するためには、

  1. 広告主がビューアビリティやアドフラウド、ブランドセーフティの基準を自社の状況に合わせて設定し、
  2. 代理店パートナーやパブリッシャーとこれを共有し、基準を守ることに双方が合意し、
  3. デジタル広告のサプライチェーンの一つ一つがしっかりと対策を取ること

が必要です。デジタル広告にかかわるすべてのプレイヤーが一丸となって対策することが求められるのです。そして、各指標が基準を満たしているか否かを判定し、基準を満たさないインプレッションを排除するためには、信頼できる第三者による計測と対策の導入が欠かせません。

 

Uberが、アドネットワークやさらにその下請け業者まで訴えたことは、「誰が一番悪いのか」「誰が対策をすべきなのか」という、アドベリにおけるニワトリタマゴ論争に一石を投じました。今後どのような展開を見せるのか、さらなる続報が期待されます。

 

 

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