AI・機械学習 vs 広告不正の闘い

2019年02月22日 By Michael Krauss

過去数年のニュース見出しを眺めてみると、AIが私たちの生活の隅々にまで影響を及ぼしていることを実感せざる得ません。書かれた文章や人が話す言葉を理解し、私たちが置かれている環境を知覚する機械はもはや珍しくもなく、バーチャルやリアルの世界のあちこちでロボットが活躍し、私たちのコミュニケーションや仕事のありかたまで変えてきています。自動運転はもはや夢物語ではなく、すぐそこにある現実です。デジタルマーケターにとっても、この流れは決して他人事ではありません。映画『ターミネーター』を想起させるような「機械の勃興」を煽る記事を読みながらも、私たちはいまだにこの破壊的なテクノロジーとどう向き合うべきか、答えを出せていません。

業界全体を混乱に陥れている一つの要因は、AIや機会学習といった言葉が今までとは異なる意味を持ちはじめていることにあります。これらのテクノロジーが広告不正対策にとってどのような意味があるのかを考える前に、まずはこの言葉の定義を改めて確認してみることにしましょう。

AI(アーティフィシャル・インテリジェンス=人工知能)は形を変えながら何十年も前から存在しており、決して目新しいコンセプトではありません。しかし近年のアルゴリズムの進歩、処理能力とストレージの急激な増加、そして消費者のオンライン活動によって生み出されるデータの爆発的増加が、AIを一気に主役の座へと押し上げました。「AI」という言葉は広い意味を内在しています。皆さんも聞いたことがある、世界を変える可能性がある多くのテクノロジ、例えば自然言語処理、バーチャルエージェント、ロボット工学、自律走行車、コンピュータビジョン、そして機会学習などです。

機械学習は、「読み込んだデータからパターンを学ぶもの」と定義することができます。機械学習では、コンピュータに人間の能力では処理しきれないような膨大なデータを読み込ませてパターンを発見させることです。アドテク業界ではこの機械学習を広告不正対策に活用してきました。何百万という広告インプレッションを分析し、不正パターンを学習し、人間以外によって発生しているトラフィックを見分けたり、ボットの不正行動を検知するというのは機械学習が得意とする分野です。

IASではAIと機械学習を、おもに二つの重要な不正対策技術に用いています。

 

行動とネットワーク分析

ビッグデータを分析し、人間とボットによるわずかなサイト訪問パターンの違いを見分けます。自動化されたプログラム=ボットは、いくつかのドメインに繰り返しアクセスする傾向があります。こういった特徴的な行動パターンを検知することが、ボットによる不正行為の発見につながります。ほとんどの人間は同じサイトに1日に何度も繰り返し、同じ順番でアクセスすることはしません。ボットによる行動が疑われるサイトアクセスを発見した場合は、このパターンを追跡し、トラフィックを不正なものと判定します。機械学習は、人間の分析ではすぐに不正と判断できないようなパターンであっても特定することができるのです。

IASは、1日に100億インプレッションものデータを観測しています。ビッグデータと呼ばれるこの膨大なデータを処理できる能力は、限られた量のデータしか扱えない、あるいは特定の解析手法しか持たないベンダーに比べ、より精度の対愛不正を検知する機械学習モデルの構築を可能にします。それは、進化し続ける不正の手法を素早く解析して対応し、不正対策をかいくぐろうとする新たなボットの出現にも対応できることを意味します。ビッグデータと機械学習を活用するUberAmazonなどの事業者は、このテクノロジーを自動運転やドローンによる配達のような技術的なイノベーションに役立てています。私たちは同じテクノロジーを、マーケターが投じるデジタル広告への投資を守るためにも役立てるべきだと考えているのです。

 

ブラウザーと端末分析

機械学習でブラウザの機能とユーザーエージェントをマッチングさせることにより、無効なトラフィックを特定することができます。常に変化するユーザー環境と不正手法をマッチングし、膨大なデータの中から特定のパターンを検出するためには、機械学習が不可欠です。正しいモデルを構築し、分析に必要な膨大なデータを扱うことができてはじめて、この分析手法はボットネットワークを一網打尽にできるのです。

 

機械学習の次に来るもの

機械学習は、ブランド毀損や不正インプレッションを防ぐのに用いられている技術の核となる要素です。IASはさらに2つの分野で、ベリフィケーション技術を進化させています。

 

AIによる自動化

AIによるルーチン作業の自動化は、一定のルールに則って行われる大量の作業を効率化に役立っています。私たちは、提供するソリューションをお客様が求めるスケールに対応させるため、今後もこの技術の進化を追求していきます。AIによる自動化は、人間のアナリストが介入することなくより高度に状況を分析・学習し、学んだ内容から推論することを可能にします。そうやって得た知見を業務に還元することで、より高度で効率的なビジネスフローを構築することができるのです。

 

次世代の機械学習

私たちは、機械学習、特にニューラルネットワークによるディープラーニングと強化学習の技術開発に力を注いでいます。この二つの技術は既存の領域知識に対する依存度が低く、不正の検知と防止モデルを自己修正しながら、結果を最適化することができます。

人工知能がデジタル業界や社会に大きな変化をもたらすことは間違いありません。マーケターにとってそれは、大規模なデジタルキャンペーンによって生み出される膨大なデータを、AIの自動化や機械学習で的確に処理し、活用できるようになることを意味します。マーケティング担当者の知恵と努力と広告予算が無駄に消耗されることがないよう、IASはこれからもイノベーションの最前線に立ち、不正と闘っていきます。


※この記事は英語版Insiderに掲載の「AI, machine learning, and the fight against fraud」をもとに、IAS Insider Japan編集チームが翻訳、編集しました。